業務活動歴

金尾敏郎 かなおとしろう 1952年(昭和27年)福岡県生まれ、明治大学商学部卒、広告代理店勤務の後、家業(株)かなを(婦人服・寝具小売業)入社。同時に商店街活動を始める。地元商店街振興組合・理事、(協)市商店連合会・理事、スタンプ事業協同組合を設立、専務理事を経て独立。平成4年より福岡市にてコンサルタント業に従事。以降、北海道から沖縄県まで46都道府県の 約2000市町村に延べ約5000回 (平成4年~令和5年)伺う。

〒812-0008 福岡市博多区東光1-6-16 マインズ博多駅東807号
☎090-8769-5304  mail☞ kanaot10@gmail.com

■参加したシンポジウム
  「全国スタンプサミット」にパネラーとして参加
  「大阪府商店街シンポジウム」にて基調講演
  「北陸三県商店街セミナー」にて基調講演
  「九州スタンプサミット」を企画・運営
  「スタンプフォーラムin山形」にて基調講演
  「長野県情報化講演会」にて基調講演
  「全国スタンプサミットin山中温泉」を企画・運営
  「近江スタンプサミット」を企画・運営
  「中国四国スタンプカードサミット」を企画・運営
                他十数回

■中小企業大学校 講義
  
 東京校3回・旭川校・三条校・瀬戸校・関西校2回・直方校3回

■スタンプ(ポイントカード)事業・商品券の新規開始と再構築まで
継続的に支援した団体

  全国298団体(平成4年~令和5年)

■中小企業庁
  中小企業119・専門家

■全国商店街支援センター
  商店街よろず相談アドバイザー
  商店街支援パートナー

■福岡・佐賀・長崎・宮崎・鹿児島・山口の各県
 商工会連合会エキスパート 他

■専門分野
 地域共通ポイントや、各種商品券・キャッシュレス化で地域内循環型経済を目指す
 

  

スタンプ・カードで売上げが上がるか1995/7発表

 加盟店でありながらスタンプ・シールを出さない店の問題は、この事業の永遠の課題です。なぜ出さないのか?答えは簡単。出せば経費が増えるのは確実ですが、売上げの上がる保証がないからです。この「保証」以上に説得力のある理由はないし、この問題がカード化によって解決するほど単純でないことも全国の商店街で実証済みです。
 とにかく、店は販促効果を実感しないとスタンプを出しません。出した経費の元を取れないとこの事業は続けられないのです。これは経営者として、むしろ正常な感覚ではないでしょうか。

◆スタンプ(カード)による販売促進効果◆

  非加盟店との差別化

 これは、どこで買っても同じ商品が同じ価格の場合に通用することで、価格破壊の時代には、その効果はさほど期待できません。そこで、現在は以下の考え方がこの事業の目標となりつつあります。

  消費者が買い得感を感じる

 企業スタンプや量販店のカードと異なり、地域スタンプ(カード)は、たとえば、出す側(店)の負担は2%であっても受け取る側(消費者)は、販促企画等を通じてそれ以上の価値で使う選択ができます。これが「等価交換単純値引き方式」である量販店等のカードとの違いです。もちろん、受け取った消費者が、すべて本来の価値より高く使えるわけではないけれど、熱心に集める人(お得意様)ほど有利になる仕組みになっています。
 このように、スタンプ(ポイント)の付加価値が認識されると、消費者は買い得感を感じ、「10%引き」より「8%引き+スタンプ(2%)」を選択してくれて、店には以下の結果がもたらされます。 

   利益率と売上げ額が同時に上がる

    1000円の10%引きは・・・・・・・・・・・・・・・・900円
    1000円の8%引き+スタンプ(2%)は・・・902円
   ⇒1000円の8%引きは920円 920円にはスタンプ9枚
    920円-スタンプ経費(2円×9枚=18円)=902円

 このように、値引きの一部とスタンプ(ポイント)を置き換えることによって、スタンプ(ポイント)経費を差し引いても2円の値引き損が軽減され、利益率が改善されるとともに2円高く売れるため、同時に売上げ額も上がります。すべてはこの基本の応用です。
 以上のような、消費者の顧客満足と地域商店の利益確保が両立できる仕組み、これが価格破壊の洗礼を受けたスタンプ(カード)事業の進化した姿なのです。
 そして、この事業を利用して地域商店が生き残ることは、その経営者のためだけではなく、高齢社会において「無店舗地区をつくらない」という社会的使命でもあるのです。

★上記内容は1997年(平成9年)、消費税が3%から5%に改定された4月に、当時の日経流通新聞に連載させていただき、以降、筆者は全国に伺うようになったのです。(2020追記) 

商店街カードの3つの錯覚  1996/4発表

 今春(1996年)、全国屈指の有力商店街(九州内某県庁所在地)幹部から来た年賀状に、「ポイントカードが低迷しており、スタンプシールで出直してはという声があがり頭を痛めています」と書いてありました。その商店街は、1990年ごろ鳴り物入りで商店街カードを導入しています。当地のように地力のある商店街は、カード事業がうまくゆかなくても大勢に影響はないのでしょうが、商店街が衰退して、再起をかけて取り組んで失敗した場合、多くのところは「命取り」になるかもしれません。
 実は、筆者の出身商店街も1992年に商店街カードを開始しています。前述の商店街とは異なり、スタンプ事業という下地があっての「カード化」でしたが、試行錯誤の状態に変わりはありません。
 消費者にはスマートで便利、店や商店街も管理がしやすい、言わば、良いことずくめのカード化でなぜ成果が上がらないか。そこに「商店街カードの3つの錯覚」があったのではないかと、カード推進派だった自身の反省も含めて、今、筆者は考えています。

◆カード化の動機と錯覚◆

  スタンプシールの出し惜しみ対策

 カード化の動機は何といっても「スタンプの出し惜しみ対策」です。「お金とカードを一緒に出せば…」という発想ですが、ここに第一の錯覚がありました。量販店のレジ係とお客との関係と異なり、一般商店の場合、店主や従業員とお客さんの人間関係で商売が成り立っています。そのため、お客さんが遠慮してカードを出しにくい。そこで「カードをお持ちですか?」という声かけ運動を実施しますが、出し惜しみをする店が声かけなどするはずがありません。声かけをしないでいて、「お客がカードを出さないから…」という責任転嫁が起ります。これが、「カード化によってスタンプの出し惜しみがなくなる」という机上論の結末です。スタンプ・シールにしてもカードのポイントにしても、店が販促効果を実感しないと出しません。この問題の解決に近道はないのです。

  若者対策

 カード化で、若いお客さんが増えるという考えも錯覚でした。確かに男性客や若年層でポイントをためる人は増えます。しかし、これは、今まで買物に来ていて、スタンプ・シールは貼るのが面倒だからいらないと、言っていた人がためるようになることで、新規の若いお客さんが増えることではありません。これは、スタンプとかカード以前の問題です。

 顧客管理による商店街の情報化

 カード導入によって商店街も顧客情報管理を行い、それを販売促進につなげる。この発想が一番大きな錯覚でした。同業者も多い寄り合い所帯の商店街で、特定の店が全体で集めた顧客情報を活用することは、相当の合意形成(加盟店とともに顧客も)が必要です。しかも、従来から「顧客商売」に熱心な店にとっては、販売商品の詳細が把握できないような、中途半端な顧客情報では役に立たちません。これは本来個店でやるべきことのはずです。

 これが商店街カードの錯覚です。これらの問題を踏まえた上で、カードの利点を活かす創意工夫が必要です。

★以上は20年以上前の文章ですが、今でもまったく同じ発想を繰り返してはいませんか。(2022/4・追記)
 

スタンプ事業低迷の原因と打開策 2002/9発表

 全国のスタンプ会に伺っているうち、ある共通点が明確になってきました。それは、20年、30年とスタンプ発行実績を伸ばし続けてきたところのほとんどが、平成4年(1992年)を境に実績が低下し始めているという事実です。これは、景気低迷の直接的影響以上に、この時期、この事業にとって根底を揺るがすような問題が起こったことを意味します。
 このころ、バブル崩壊後の景気対策として、規制緩和が推進され価格破壊が起こりました。たとえば、ビールがどこで買っても同じ価格であれば、スタンプをもらえる酒店で買うのは当然ですが、これに価格差が出てくると、「スタンプによる非加盟店との差別化」という、この事業の大原則が脆くも崩壊します。 
 当時は、筆者も含めて誰も指摘した人はいませんが、実は平成4年の時点でこの事業による販売促進効果は無きに等しくなっていたのです。これは、平成4年以降にスタンプ(カード)事業を開始した団体の中で、際立った実績を上げているところが少ないことでもわかります。
 さらにこの後、事業低迷の原因もわからないまま、不振打開策として各地で「カード化」が推進され、問題がさらに深刻化しました。カードの原点であるスタンプ・シールによる差別化ができないのに、形だけカードに変えて成果が上がるわけがありません。これは、今だから言えることで、今さら誰を責めることもできませんが…。

 このようにスタンプ事業低迷の原因は、バブル崩壊後の規制緩和による価格破壊で、スタンプ・シールの「神通力」が効かなくなったことに加え、各業界で、カードやはんこによる「ポイント制」が急増し、商店街スタンプの独自性がなくなったことにあります。これが、スタンプ事業衰退の「外的要因」とするならば、「内的要因」もあります。それは事業展開の方法が時流に合わなくなったということです。
 スタンプ事業といえば、昔から「イベントの魅力で消費者のスタンプ収集意欲を高める」という発想で事業を行なってきました。しかし、冷静に精査してみると回収台紙(消費者がためて使う台紙)の7割から8割は加盟店での買物に使われているはずです。他方、イベントに使われる台紙は1割程度で、しかも、参加者はいつも同じ顔ぶれ。結果として、1割程度の特定のお客さんのために毎年多額のイベント経費を使っていたことになります。
 これは、加盟店にとってもスタンプ会にとっても、一番ありがたい大多数の「スタンプ台紙を店で使ってくれるお客さん」に、回収差益分の損(お客さんは気がつかないだろうが)をさせ、一握りの特定のお客に高い率で還元するという社会的不公平ともいえる結果となっていたのです。これを正すこと。つまり、イベントの方向性の見直しが21世紀のスタンプ(カード)事業の大きな課題であり、これが事業低迷の打開策となります。
 そのために、事業の再構築(リニューアル)を行います。これは、システムの見直し(単価/貼付枚数/消費者還元率)、事業の見直し(事業展開の方法)、財務体質の見直し等を4~6ヵ月で行い再スタートすることです。この間に、会員の啓蒙活動と新規会員の勧誘も同時に行います。 

これからどうなるスタンプ事業 2006/3発表

 全国でスタンプ(カード)事業の低迷が続いており、事業活動を停止するところも出ています。今後の、この事業の在り方を各地の実例により検証してみましょう。
 平成17年11月に某スタンプ会が解散しました。その二ヵ月ほど前にその中の一加盟店(酒店)から、「スタンプ会は解散するが、お得意さんに対して申し訳ないし当店もスタンプがなくなると困るので、はんこで個店スタンプを始めたい」という相談がありました。お店に伺ってみると、近くで食料品の移動販売をしている店主も来ており、検討の結果、共通の紙カードを作り、それぞれの「はんこ」で満点になったものが、どちらの店でも買物に使えることになりました。そして、開始はスタンプ会解散の翌日と決定。この二人の女性経営者によると、同じ意向を持つ店主が数名おり、「将来、第二スタンプ会に・・・」ということで盛り上がりました。

 全国的な加盟店減少傾向の中では、大阪十三の「どんとこいスタンプ」の健闘が光ります。かつての約70店が現在12店となるも、スタンプ発行高1300万円、回収差益率も15年前の16.6%のままで十分運営できています。安定経営の要因は、加盟店減少により、逆にやる気のある有志だけが残り、事務局を置かずに皆で役割分担して運営するという、徹底した低コスト運営システムが確立されていることです。さらに、価格にシビアな大阪のこと、例えば店頭で「1割引きするところをスタンプ3倍(6%引きに相当する経費)進呈を恒常的に各店が実施」しており、その結果、前記のような実績を残しています。「自分達のことは自分達で」という精神と「価格破壊の時代のスタンプは、おまけではなく値引き対策」という理論に裏打ちされたスタンプ事業なのです。

 今、各地で様々な理由により、消費者還元率を1%に下げるスタンプ会が増えています。北海道の斜里ポテト協同組合は、平成6年に財政改善のため、加盟店負担2%のままで消費者還元1%に踏み切りました。1ポイント2円で200ポイントで200円の還元という仕組みです。近年、各地で500枚で500円、300枚で300円、200枚で200円等の1%還元が特に目立つようになりました。スタンプ単価が2円の場合、回収差益率は50%で、どのスタンプ会も財政危機は2年程度で克服され、次のステップへ踏み出しています。一方、弘前市の土手町商店街振興組合連合会のように、財政問題とは別に地場の中三百貨店に食料品や特価品にもスタンプ(ポイント)を出してもらうという目的で、平成12年に全加盟店一律に2%負担を1.3%に下げ、1%還元に踏み切ったところもあります。   
 
 いずれの場合も、還元率低下による消費者の反応が一番気がかりなところですが、むしろ、量販店やチエーン店の1%還元が定着しており各地の実例を見ると、これに踏み切っても意外とクレームは少ないようです。それでも、①早くたまる台紙、②旧台紙より特典を多くする、などして、大手量販店等との差別化や消費者対策には万全を期する必要があります。この場合、システム全体としては還元率が下がるが、熱心にスタンプを集めているお得意様には、今まで以上に有利になるようにという信念を持って取り組むことが肝要です。その中で、「肝」になるのが、「1ポイントから使える方式」と「満点方式」の違いを明確にし、「現金で買う(払う)人より、スタンプやポイントで買う(払う)優良顧客さんを優遇・歓迎」する姿勢となります。

 

ポイント制で地域内循環型経済を 2022/4発表

 ここまでお読みいただいた内容は、20年以上前に発表したものも、そのままにしてあります。なぜでしょう。実は、現在(2022年)でも日々、各地で同じことを伝え歩いているからです。つまり、バブル崩壊(1991年)以降、「ポイント制」に対する取り組み姿勢が変わってから今日まで、基本は全くブレてないというか変わっていないのです。

 近年、買物や飲食ほか、ほとんどの消費にポイントが付いて当たり前という、ポイント制全盛の時代にありながら、一方で永年続く地域や商店街のポイント制は、マンネリ化低迷しているというのが実情です。今後、新たな発想でポイント制を見直し、地域内で消費とお金を回すことが重要となります。さらに、「キャシュレス決済にポイント」、「社会課題解決策にポイント」と、「施策ポイント」の時代となり、そして、1台のスマートフォンで複数のポイント管理ができるようになりました。ここでポイント制の特性を再確認。

 

ポイント制とは⇒ ポイントカード、スタンプシール、はんこ等の総称。

 

ポイント制の特性⇒ まとまった商業集積がなく、地域内に商店(事業所)が点在している状態でも

                             成り立つ共同事業。(空き店舗対策に余計な労力を使う必要がない。)

 

ポイント制の目的は⇒ 本来、小売り・サービス業の販売促進策だったものが、昨今は、購買(利用)

                                金やその頻度に関係なく、不特定多数の消費者を対象とする業種であれ

                                ば、ほとんどの事業所等で活用できるようになり、「地域起こし事業」となった。

               対象外は、製造業と公共事業専門の土木建設業ぐらい。


 

ポイント制の種類⇒  ◆単独ポイント(特定の企業や事業所のみで発行と回収を行うもの)・・・出す

                                 とに経費が掛からず、【回収(買物利用等)が値引き損となる。

              ◆共通ポイント(商店街や地域などで発行と回収を行うもの)・・・最初に経費

                                 が掛かるが、【回収(同上)が売上となる。

 

ポイント制の新たな役割⇒ 従来の販売促進策に加えて、少子高齢化や環境問題など、社会(地

                                      域)題解決策の一助となる。

 

ポイント制の真髄⇒ 買い上げ額に応じたポイント制は、「多く買った人(あるいは結果的に高く買っ

                             た人)ほど多くの特典」がある。つまり、店に利益をもたらす優良顧客様ほど、

                             多くの恩恵があるという普遍的な公平性を持つ。(抽選の要素を減らす)

 

ポイント制の新展開⇒ ①「早くたまって、使いやすい」

               ②現金で買う人よりスタンプやポイントで買う人を優遇・歓迎

               ③イベントは「招待系」から「販促系」へ

               ④全店〇倍セールから、「各店〇倍セール」や「買いたい時の2倍券」

               ➄ポイント(スタンプ)の業種別・個店有効活用法の徹底

スタンプ(カード)事業の問題解決策

加盟店でありながらスタンプを出さない店がある
 スタンプ事業永遠の課題です。そのために講演会が開催されますが、単発の講演会では効果はあまり期待できません。(講師が言うんだから間違いない。)まず、スタンプを出さない店主は講演会に出て来ないからです。かりに来ても、一度や二度よその事例を聞いたぐらいでは納得しません。出さない店主は、それなりの信念があります。「信念」とは何ですか。それは「損得」です。商売人ですからスタンプ効果を実感すれば出すようになります。

 本当は、スタンプというものは出す時点(販売時点)の効果が大きいのですが、これはお店の側には見えにくい。ところが、スタンプ台紙が買物代金として戻ってくればスタンプ効果は歴然です。これは、本来、現金で買われるはずのものがスタンプ台紙に変わっただけであっても嬉しいものです。ですから、役員会等で、お店に台紙が返ってくる仕組み(イベント)作りをすることが問題解決につながります。また、出したスタンプ経費の元が取れる「業種別個店有効活用」の啓蒙活動も必要です。スタンプは「意識」ではなく「損得」で出すものです。
特価品にスタンプを出さない
 昔(平成4年以前)のスタンプは「おまけ」でした。ところが、「おまけで固定客化」は「一物一価・常時定価販売」の場合に通用することで、価格破壊の時代にはその神通力には期待できません。現在は、「おまけ」ではなく「値引き対策」なのです。別の言い方をすると、共同事業であるスタンプに、値引きに匹敵する価値を持たせて、個店ではできない、「顧客満足と利益確保の両立」を目指すのです。

 「スタンプを出すことで利益率は下がるが、売り上げが上がる(かも)」という考え方は、今は成り立たちにくく、「値引きの一部とスタンプを置き換えることによって利益率を上げる」という取り組み方をしないとスタンプ経費の元は取れません。このように考えると、特価品にスタンプ(ポイント)を付けることこそ、この事業の「奥義」と言っても過言ではないのです。特価品にも付けなくてはいけません。ただし、目いっぱい値引きしてその上スタンプは付けられません。だから、値引きの一部をスタンプと置き換えるのです。
高額商品にスタンプを出さない
 一般的に高額商品は値引きが「付き物」で、値引きをしたものにはスタンプ(ポイント)が「付かないもの」という身勝手な「常識」もあります。これは、「定価に付けるが特価には付けない」という発想で、スタンプ(ポイント)を「おまけ」と認識している証拠。「おまけで差別化」といわれたスタンプが「価格破壊」によってその効力が薄れ、今日では、これを「値引きに匹敵する価値」ととらえ、「値引きの一部とスタンプ(ポイント)を置き換える」ことが一般的になりました。

 値引き率とスタンプの倍率の相関表を作って、たとえば、「二割引するところを、一割引にするとスタンプ(ポイント)何倍まで付けられるか」ということを計算し、スタンプ(ポイント)経費を差し引いても二割引より値引き損が少なくなるようにします。金額だけで考えると、誰でも安いほうがいいに決まっている。そこにスタンプ(ポイント)を組み込むことによって、価格に関しても顧客満足と利益確保の両立」を目指す。「値引きがいいですか?それともスタンプ?」は全く論外。 
スタンプ(ポイント)は「納得料」で「安心料」
 価格破壊の時代のスタンプ(ポイント)の役割を「納得料」と考えると、この事業の今後の方向性が見えてきます。同じ商品であれば誰でも安く買いたい。そのため、安い店を探して歩く。ここが安いと思って買って、後日、もっと安い店があれば落胆します。そして落胆が怒りに変わる。たまたま、その商品だけが高かったのであっても、この場合、消費者心理として、他のものまで高いような気がして二度と来店しません。

 このようなとき、店が支払金額に匹敵するスタンプやポイントを付けていれば、多少高買いしていても納得できるというものです。だから、スタンプ(ポイント)は「納得料」なのです。また、店にとっても、自店より安く売っている店があると、すでに買ってくれたお客さんの気持ちを考えると心中穏やかではない。この場合も、スタンプ(ポイント)を付けていたことが「安心料」になるわけです。「価格破壊」によって、「おまけ」だったものが、「納得料」や「安心料」に変身したのです。
スタンプのイベントは何のためにやるのか
   スタンプ(カード)のイベントの目的は三つ。第一は、スタンプ(ポイント)の価値を高めること、次に加盟店の利用を増やす、そして、新しいスタンプ(カード)ファンを増やすことです。よく行われる「招待系の企画」も、単に、「そのイベントに参加したいから加盟店で買物をする」ということより、「本来、〇〇円の価値のものが、2倍、3倍の価値で使える」という、スタンプ(ポイント)の価値を高めるためと考えるべきでしょう。

 二番目は当然のことで、最後の、「スタンプ(カード)ファンを増やす」というのは、この事業は新しい収集者を増やし続けてゆかないとジリ貧になるという性質のものだからです。そして、この三つの目的が達成されるとスタンプ(ポイント)の発行高が増加します。ただし、このような時代ですから、前年並みでもイベント効果があったと見なくてはなりません。単発のイベント参加者が多いか少ないかで一喜一憂しないで、年間を通して、最終の数字で冷静に成否を判断 すべきです。  
ポイント制における「直接販促」と「間接販促」
 スタンプ(カード)による販売促進には、「直接販促」と「間接販促」があります。前者は、スタンプやポイントの発行と回収に伴う一連の業務による直接的効果。たとえば、3倍セールで売り上げ増とか、高額回収や倍出し回収(いずれも、ためたスタンプやポイントが有利に使える企画)で新規客が増えたとか。一方、後者はスタンプやポイントの進呈により顧客情報を集め、それによって、販売促進を目指すという考え方です。そのため、以前(平成3年頃)は、「ポイントは顧客情報収集のためのおまけ」などという極論まで登場したほどでした。

 このような発想ですと、顧客情報を集めただけで自己満足してしまうものです。商売は、「売れていくら」「儲かってなんぼ」。「2割の優良顧客が・・・」というのは、あくまでも個店や企業単位の発想であり、商店街等の組織で成果をあげたという話は聞いたことがありません。この事業に取り組むとき、冷静に、そして客観的に、「直接販促」と「間接販促」のどちらに主眼を置くのかを判断する必要があります。
量販店等のカードと、どこが違うのか
 量販店やチエ-ン店で、これだけ「ポイント制」が盛んになると、消費者は商店街等のスタンプとそれらの区別が付かなくなり、これが共同事業であるスタンプ(カード)の独自性の消滅と事業の衰退につながってきます。量販店等のカードは個店のカードやはんこと仕組みは同じで、「出すときは経費がかからず、回収が値引き」となるが、地域共同事業のスタンプ(カード)は、「最初に経費がかかるが、回収は売り上げ」となります。

 この、「回収が値引きか売り上げか」の違いは大きく、大型店等では3倍、5倍、5%、10%とポイントを出す企画ばかりで「回収」を促進する企画を行っていません。回収すればするほど「値引き損」が増えるからです。これが、量販店等のカードの弱点であり、地域共同事業のスタンプ(カード)との相違点です。この違いを認識した事業展開で差別化を図ります。また、スタンプ(ポイント)に掛けた経費と考えられているものが、本当に「経費」として計上できるのか、単なる「値引き損」なのかという問題もあります。
烏山方式とは何だったか
 「烏山方式スタンプ」は、「イベントの魅力でスタンプの付加価値を高める」ものと考えられていますが、厳密には「昭和55年の法人税基本通達に則った税務処理を行い、課税対象となる利益を消費者に還元してスタンプの付加価値を高める」というのが正確で、むやみに、イベントに金をかけるというものではありません。その認識がないと右肩下がり経済のもとでは、事業運営が厳しくなります。

 また、「回収差益を設定する」というのは、1枚2円のスタンプが350枚貼られた、本来700円の台紙を500円で回収したとき、200円の回収差益が残り、これを組織運営の基礎とする考え方です。このとき、加盟店に対して回収差益分は「お客さんに余分に貼ってもらう」という表現で店の負担感を少なくするイメージ付けをしています。一方、烏山方式以前のスタンプは、この「回収差益」を「手数料」という名目で別に徴収する形となるため負担感はあるものの、消費者還元額が明確になります。今後、両者の利点の組み合わせが重要となります。
スタンプ(カード)事業の広域連携(1)
 今後、様々な理由で各地のスタンプ(カード)会が統合・合併の方向に向かうでしょう。その際、ネックとなるのは小規模の会の出したスタンプ(ポイント)が、大規模の会に吸い上げられるという思い込みです。そこで、筆者は合併話の前に「まず、合同事業を実施して、消費者の反応(動き)を見極め、かつ、事業への取り組み姿勢のレベルを合わせること」を勧めています。

 その期間中、それぞれのスタンプ台紙や満点カード等の相互利用可能とすると、小規模の会の加盟店が隣接する大規模の会の台紙や満点カードを多く回収し、その逆は極めて少ないことがわかります。これは、後で考えれば当然のことで、小規模の会のある町の住民は隣接する大規模の会のポイントをためているが、大規模の会のある町の住民は隣町の小規模のスタンプは集めていない。そして、ためたものが地元でも使えるとなると、このような結果になるのです。  
スタンプ(カード)事業の広域連携(2)
 スタンプ(カード)事業は「地域間競争」という意図で「地域限定」の考え方が支配的でした。しかし、昨今は隣町に買物に行っても、そこの量販店等で買物はするが、一般商店での買物は少ない。実情は隣接する市町村において、地域の商店同士の競合は極めて少なくなっているのです。それならば、近隣の複数の組織が統合・合併して事業展開するスケールメリットを優先させるべきです。

 そこで、もう一度「スタンプの特性」を冷静に見直してみると、それは「組織的に実施するスケールメリットと同時に、個店独自の対応ができる」ということに尽きます。「個店独自」とは、全体ではやってないが、自店の事情で独自に「倍セール」や「倍出し回収」等の販促企画を実施することです。この個店独自を地区独自と置き換えてみると明確ですが、事業統合しても全体のスケールメリットを地域(町内・商店街)単位で独自に活かすことができます。このように、たとえ「消費者の行き来がない」位置関係であっても、スケールメリットを地区独自に活用できるのです。

担保性のある地域通貨としてのポイント制で地域循環型経済を















 先日、某県某市の国の補助事業を活用した「キャッシュレス化」の進捗状況を、国の調査官が途中審査に来られました。事前にお名前を聞くと、30年以上前に1~2度お会いした方だったので、私も同席して対応したのです。調査官も「あの時の…?」と驚いておられ、私も、「今思えば、あれが、我が国初のキャシュレス化の試みでしたね。」と。

◆キャッシュレス化は、結果からすると平成初期に始まっていたのです。当時30歳代半ばだった私は、商店街役員として平成3年~4年の「中小小売商業カード化モデル事業(全国1ヵ所指定・補助額8600万円・国と県で折半)」に、企画書も申請書も一人で作成し取り組んだのです。このチャレンジが後の私の人生に大きな影響を及ぼすことになります。

◆課題は、1枚のカードに「ポイント・クレジット・プリペイド・キャッシュカードの機能を持たせ、且つ、商店街も百貨店並みに顧客情報管理をせよ。」というものでしたが、通産省(当時)のこの施策に、大蔵省(当時)から「待った」が掛かったのです。「商店街の発行するカードに、キャッシュカードの機能を持たせるなど、まかりならぬ」と。なるほど、監督官庁からすれば当然のことでしょうが、国の施策には全くの素人だった私は、これが「縦割り行政」というものかと痛感しましたね。

◆結局、平成3年時点で、「ポイント」と「クレジット」の一体化はできましたが、「プリペイド」は、テレフォンカードは定着していたものの、ハイウェイカードは廃止寸前。そのような中、商店街が発行するカードに、現金を預託する市民がどれだけいるかという問題もあり、中断せざるを得なくなりました。その後、スイカ、パスモなどの交通系と、量販店など流通系で「プリペイド」が実現するまで約10年の歳月を要したのです。

◆キャッシュカード機能は、その後10年を経てIT系の机上論により「デビット」と名前を変えましたが、これが全く鳴かず飛ばず。さらに10年後に、デビットカードとして再登場し現在に至っています。当初は、「プリペイド」のようにFeliCa(ICカード)のシステムでしたが、近年、中国から逆輸入された形のQRコードを使ったほうがローコストということで、その方向となりました。

◆30年前を振り返ると、当時は「キャッシュレス化」という概念はなく、アナログの「スタンプ・シールのカード化」の利便性と「顧客情報管理」という発想が主体でした。しかし、平成の時代に、スタンプ・シールをカード化して業績が改善した処は全国でも皆無でした。そして、寄り合い所帯である商店街組織で顧客情報の共有化などできるはずがなかったのです。

◆そして今、また、IT系の机上論により「キャッシュレス化」が進んでいます。よほど慎重に取り組まなければ、また同じ轍を踏むのは確実です。個人的には30年前、商店街役員として国・県の多額な予算を使って取り組み、果たせなかった事業の罪ほろぼしを、今、しているのかも知れません。

◆近年、本来「買い上げ額の応じた顧客サービス」だったポイント制が、様々な意図を持った条件付きの「思惑ポイント」化され、また、顧客情報管理のずさんさが各地で表面化しています。ここは、「ポイント制の正当化」とともに、私が十数年前に考案した「個人情報を個別管理しない固定客化」の出番のようです。単純な「デジタル思考」の限界は近い。そこに人のある限り。

◆今後も、拓殖大学政経学部教授の山本尚史先生との連携を一層強化し、「EG(エコノミック・ガーデニング)による雇用で得られた所得を、担保性のある地域通貨としてのポイント制で、地域内で回し雇用の連鎖」を目指したいと考えております。
【20210202 + 20220713】 











 アベノミクス批判の急先鋒として知られる著名な経済学者、そう、「アホノミクス」と公言してはばからない人です。その方が地域再生の一手段として「地域通貨」による地域循環型経済を提唱しておられます。私も金融政策だけで経済が再生するとは思っていませんが、ここでは、「地域通貨」に関して一言申し上げたいことがあるのです。

 二十数年前、「エンデの遺言」というNHKのドキュメンタリー(Youtubeご参照)を見て、多くの方々が感銘を受け地域通貨に傾倒して行きました。全国で地域通貨のセミナーが開催されましたが、1年目は参加者が殺到したものの、地域の経済活動には繋がらないと目聡く見抜いた商業関係者たちが離れ、2年目には参加者は半減、そして、ブームは3年で終わったのです。

 地域通貨が定着しなかった理由は、何の担保性も無い擬似貨幣のようなものを、勝手に作製し、それを地域内で回すということに限界があったからです。しかも、奉仕者(してあげる人)と被奉仕者(して欲しい人)の相互扶助の精神も、現実的には地域内で回らず、奉仕者に地域通貨が「偏在」することになりました。そして、それを使うにも、実社会では金銭的価値がない訳ですから「買い上げ金額の5%~10%まで利用可」などという地域商店の自己犠牲に頼るしかなかったのです。

 現在、一部存続している地域通貨は、主催者が何らかの収益事業を行っており、それを担保に回っている事例が多く、広がりが限られる傾向にあります。そのような現実を知ってか知らずか、その経済学者氏は机上論で、国の政策は地方経済への好影響が限定的で、地方では独自に地域通貨のようなものが必要と説いておられるわけです。Web上に放置されたままの過去の事例に惑わされて同じの轍を踏んではなりません。

 我田引水になりますが、約10年前、スタンプ・シールでポイント制を始めた宮崎県中山間地域の某町。9年前よりより、「特定検診」受診者には、ためると地元商店で買物に使えるスタンプ・シールを50枚(5000円のお買上げでもらえる分・原価100円)を差し上げることにしました。すると、伸び悩んでいた受診率が11.4%上昇し、翌年はさらに2.6%上がったのです。特定検診で早期に病気が発見できると、高齢者の医療費軽減に繋がるため地元行政は歓迎、そして、地域商店も新規顧客獲得に繋がります。スタンプ・シールという担保性を持つ「地域通貨」が地域内で巡る道筋ができたのです。

 さらにその後、は広島県某市、そして、一昨年は、熊本大震災で最も大きな被害を受けた熊本市の健軍商店街(商店街周辺の24医療機関が協力)と、各県内に先行事例が増えて行く傾向です。地域のポイント制は、全額、地域内での消費に利用でき、地域商店等の負担は、売上げ額の1.5%~2%程度で済みます。このように、本来、小売業・サービス業の販売促進策として始まったポイント制は、社会(地域)課題解決策を経て、少しずつ地域循環型経済の一翼を担う方向に進化してきたのです。

 しかも、この事業は補助金などに頼らず、地域の中小企業事業者の負担した自己財源で賄うのが原則です。これで、①地域住民の健康管理、②地元行政の医療費軽減、③地域商店の固定客化、④真の医商連携となりつつあるのです。これが「自助努力による 持続可能な 地域独自の取り組み」なのです。
【20210222】








 昔、「お客様は神様です」と、いつも舞台で唱える大歌手がいました。しかし、商店街で婦人服と寝具を販売する家に生まれ育った私には、決してそうは思えませんでした。普段は来ないで、3割引のバーゲンになるとやって来るお客さんもいます。そして、買ってくれれば良いが、「いつ半額になるの?」と…。衣料品は通常、定価の60%~70%が仕入れ値なので、まず、定価で売り、売れ残ったら3割引。それでも残ったものが半額という道を。つまり、定価で買ってくれる人がいるからバーゲンも成り立つのです。

 お客さんの中には、毎日夕刻、仕事の帰りに「それ」を確かめに来る人もいます。そんなある日、従業員の一人が「専務(私)、いつ半額にするんですか?」、私「えっ?」、従業員「半額になる日、シャッターが開く前に服は私が買います。あのお客さんだけには絶対に売りたくない。」と。客商売には悲喜こもごもあるのです。このように、お客さんの中には店に利益をもたらす神様と、永久に利益をもたらさない人がいます。いくら売上げが上がっても、全体として利益確保ができなければ事業は継続できないのです。

 私の専門は、出身地の商店街での実践を基にした「ポイント制(スタンプ・シールやポイントカード)」の再生ですが、これは売価に応じた特典なので、定価や1割引で買った人は、2割引や3割引の価格で買った人より恩典が多いことになります。昔、「ポイントやスタンプ・シール」は「おまけで固定客化」という思惑で取り組んだ時期もあり、「定価には付けるが、特価にはご勘弁」という発想の店主も…。しかし、今時、そのような取り組み姿勢では、「ポイント制」の販促効果は無きに等しいのです。

 かつて言われた「ポイント制」で「顧客の囲い込み」や「顧客情報管理」などという発想も既にガラパゴス。今は、それで店に利益をもたらす「神様」とそうでない人を見分け、そして選び、優良顧客さんを大切にして、決して裏切らないという「誓い」となったのです。常連客に迷惑が掛かるので、ミシュランの認定を拒否する老舗飲食店の信念に相通じると思いませんか?もちろん、「ポイント制」はあくまでも補助的販促手段。それ以前に的確な品揃え、味、技術、キメ細やかな心配りなどが出来た上でのことですが…。
【20210224】









 ポイント制には「単独ポイント」と「共通ポイント」があり、一見同じような仕組みに見えますが、実は全く逆の構造になっています。ですから、それを踏まえて対応しないと、経費ばかりかさみ、その効果が表れにくいのです。

 まず、「単独ポイント」とは、自店で発行し自店のみで使えるもの。これは、個店で「はんこ」等で実施するものから、家電専門店や大手量販店の「ポイントカード」まで、規模の違いこそあれ仕組みは同じです。つまり、ポイントを出すときには経費が掛からず、お客さんが店で使うと「値引き」となります。ですから、「3倍」「5倍」「10倍」と、ポイント出すイベントは頻繁に行いますが、積極的にポイントを回収(お客さんが店で使う)することはありません。そして、店でお客さんが使うと経理上は「値引き損」となるのです。

 一方、「共通ポイント」は、地域や商店街等の組織でスタンプ・シールやポイントカードを運営・管理し、各加盟店が事前にそれらを購入して、お客さん方に付与するものです。このように、最初に経費が掛かるものは、それを店頭で回収(お客さんが店で使う)すると「売上げ」となります。そのため、各加盟店は積極的に店頭回収を試みます。この場合、加盟店が前もってスタンプ・シールやポイントを購入しているため、これが経理上は「経費(販促費等)」として計上できるのです。

 このように、「共通ポイント」は、店で買物に使ってもらえれば、「店の売上げ増」となるため、「現金よりポイント等で買う(払う)お客さんを優遇・歓迎」します。具体的には「現金で買うとポイント1倍ですが、ポイントで買う(払う)と常時3倍~5倍(ポイント分のみ)」のようなことが、極めて少ない経費負担で出来るのです。お客さん方も「ポイントが使いやすく」なり、そのようなポイントは積極的にためるようになって、ポイントの価値が高まるとともに「ポイント+現金」という消費行動に繋がります。ここで「満点方式」が生かされるのです。

 このように「満点方式の共通ポイント」は、日頃、積極的にポイント等を貯めていただいている優良顧客さんほど優遇・歓迎することとなり、単なる「値引きの先送り」である量販店等の「単独ポイント」とは全く別次元のものとなるのです。

 また、「共通ポイント」にも二種類があり、ポイント等の管理・運営を業務とする会社のものもあります。これらは、地域独自の「共通ポイント」とは微妙に仕組みは異なりますが、提携して、一部独自活用もできます。つまり、「1ポイントから使える」という、「値引きの先送り」方式でありながら、地域限定で「優良顧客さんを大切に」という「満点方式」の併用という、店頭でのアナログ対応も可能となります。今回の各「Go To」企画で分かったように、要領よく立ち回る人だけが得をするのではなく、ポイント制は日常的に「優良顧客さんの優遇・歓迎」ができ、それが「地域循環型経済」に繋がり地域再生に寄与できるのです。
【20210225】









 スタンプ・シールやポイントカードなどのポイント制は、運営状況の健全化を目指し、近年、定期清算方式に変更するところが増えています。これには百貨店や量販店、航空会社のマイレージのように、利用者個別に2年程度の有効期限を設け、自動的に清算されてゆくものと、商店街などの4~5年に一度、一斉に清算するものとがあります。

 前者は、ポイント運用機器会社の机上論から始まったシステムで、後者は俗にいう国の「52年通達」に端を発し、「消費者保護上、定期精算後残った資金は利益と見なす」ということを前提としています。この通達を機に「営利事業でもないのに課税対象となるのなら、その分を消費者還元に」となり、それが、昭和から平成初期のスタンプ・シールブームに繋がったのです。

 精算には「あと6ヵ月で無効になります。お早目にお使いください。以降、新スタンプ(カード)で魅力を増して再スタート。」などの告知をします。利用者はこれを機に、現金を追加して買物をしてくれるのです。さらに、満点になっていない人は、買物をして満点にしてから使います。これを「清算告知に伴う特需」と言います。

 ただし、いきなり「清算告知」を行うと、取り付け騒ぎとなる場合もあるので、事前に財務状況を精査し、場合によっては「緩い清算」をする場合もあります。これは、先に新スタンプ(新台紙)や新ポイントカードを開始し、「旧スタンプ(ポイント)は今まで通り使えます。」とする。そして、「金額ベースで、新・旧の回収が逆転」したころを見計らって、「旧スタンプ(ポイント)は、6ヵ月後に無効となります。お早めに…」と。

 実はこの、告知費用以外経費の掛からない活性化策は、十数年前より各地で実施して来ました。特に消費税増税対策などに上手く合わせると効果は明白。先週水曜(6月9日)広島県某市商工会より電話があり、先日の役員会で今年9月の精算を12月に、総会はコロナ禍のため6月下旬の書面決議とし、総会後に役員会を開くと。

 そこで、直近の貸借対照表と損益計算書をメールで送ってもらい、確認をして返事をしました。総会資料に以下の文言を加え、その後の役員会で詳細を協議しましょうと。追加文言「現スタンプの健全運営のための【定期清算】は、本年12月に実施したいと思います。ご承知のように【清算】では【特需】が起こります。そのため、コロナ禍の今、加盟店の皆様の売上げに少しでも繋がるように、1.清算予告の時期、2.新スタンプ・新台紙の形態等については、今後、夏に掛けて逐一ご相談をしながら決定したいと思います。」
【2021061】


そ、









 令和の2年間でポイント制(スタンプ、ポイント)の意味が変わりました。一昨年の消費税増税後の「キャシュレス決済にポイント」という施策で、「プリペイドやデビット、クレジット等の利用にポイント」という認識が強くなったのです。

 中でも、以前からあった「クレジットカード決済のポイント」が注目を集めました。つまり、クレジットカードで支払えば、どこで買っても同じポイントが付き、結果、商店街や量販店等のポイントをためる必要がないと。地域間格差もありますが、この傾向に気付き早急な対応をしなければ、商店街等の地域ポイント制は存在意義が薄れるのです。

 また近年、「景品にポイント」「抽選でポイント」「条件付きポイント」という【思惑ポイント】が一般化し、従来の「優良顧客さんほど多くの還元」という大原則が歪められつつあります。加えて、お客さん方に人気のあるというイベントは、いつも特定な方々だけの参加で、通年での満点カードや満点台紙の使用状況からすると、大多数の皆さんは「店頭での日常的な買物」利用が多いはず。以上2点の不公平感の解決策は、実は構造的に「地域ポイント制」の得意分野なのです。

 そして、最近、キャッシュレス化の流れの中で、QRコード等を使ったスマホなどによるキャッシュレス決済が進められていますが、キャッシュレス化に伴うポイント制との絡みからすると、これも上記の問題解決なくしては、まず成果は上がりません。既に導入済みの処も、早急な対応が必要でしょう。

 以上のことを踏まえた総合的な方向転換の検討が、コロナ対策と共に「ポイント制の大きな転換期」には不可欠なのです。
【20210918】














 近年、地域のポイント制が危機的状態にあることが明確になり、昨年夏より各地で、今後実施すべきことの協議をしてきました。その概要を商店街関係者や支援組織の皆様にお送り致します。各都道府県内のポイント制関係団体にお伝え下さい。年度代りの時期には、これを機に「退会」や「廃業」というお店も出てくるのではと心配しています。何とか先の見込みに繋がるアクションが急務だと思われるのです。

◆一昨年の消費税増税後の「キャシュレス決済にポイント」で、お客さん方はクレジットカードで支払えば、どこで買っても同じポイントが付き、商店街や量販店等のポイントをためる必要がないことに気付いた。この傾向に早急な対応をしなければ、各ポイント制の存在意義がなくなる。以前は、地域の顧客さんは高齢者が多く、クレジットは使わないと思われていたが、ふと気付くと、今はクレジット決済に慣れた団塊世代の方々が高齢者になっていた。

◆昨今、「景品にポイント」、「抽選でポイント」、「条件付きポイント」等、「思惑ポイント」が一般化し、本来の「優良顧客さんほど多く還元」という大原則が歪められている。これを正当な姿に戻すこと、さらには、QRコードによるプリペイド化も、そのメリットを考えた場合、ポイント制との連携は避けられず、この問題解決が必須となる。

◆実はそれらの対策は、大手量販店・チェーン店等の「1ポイントから使える」方式ではなく、地域ポイント制の「満点方式」のほうが低コストで出来る改善策が多く遥かに有利である。
➡満点方式の特性➡「満点になる優良顧客さんを優遇・歓迎(常時〇倍出し回収等)」
➡ポイント制のない地区➡全国展開をしている企業ポイントとの連携(+店頭満点方式)も可。

◆ポイント制(スタンプ・シール、ポイントカード等の総称)の特性を再確認
①まとまった商業集積がなく、地域内に商店や事業所等が点在している状態でも成り立つ共同事業である。➡空き店舗対策に無駄な労力と経費を掛ける必要がない。
②従来、小売業・サービス業の販売促進策だったものが、不特定多数の消費者を対象とする業種のほとんどが参加・活用できるようになり、「担保性のある地域通貨」として「地域内循環型経済」の手段となった。(対象外は製造業と公共事業専門の土木建設業ぐらい) 
③ポイント制の種類
〇単独ポイント(特定の企業や商店のみで発行と回収を行うもの)…発行時点でポイント経費が掛かっていないため、「ポイントの回収が値引き損」となる。
〇共通ポイント(地域や商店街などで発行と回収を行うmoの)…発行時点でポイント経費を負担しているため、「ポイントの回収が売上げ」となる。
➡現金で買う人よりポイントで買う(払う)人を優遇・歓迎することで、使いやすいポイントはためる動機付けとなり、且つ日常的にポイントの価値を高め、他のポイントとの差別化が可能。
④ポイント制の新たな役割➡従来の販売促進策に加え、少子高齢化や環境問題など、社会(地域)課題の解決の一助となりつつある。(➡特定健診の促進・学童保育の支援・他)

◆ポイント制の真髄⇒ 買い上げ額に応じたポイント制は、「多く買った人(あるいは結果的に高く買った人)ほど多くの特典」がある。つまり、店に利益をもたらす優良顧客さんほど、多くの恩典があるという普遍的な公平性が不可欠だ。(➡「おまけ」で固定客化というのは昭和の発想)

◆なぜ「満点方式」なのか?
*ポイント制には、「満点方式」と「1ポイントから使える方式」がある。前者は、航空会社のマイレージから、ローカルスーパー、地域や商店街等。後者は、それ以外の各ポイント制。地域の「共通ポイント」は、1ポイントの単価(加盟店負担)を2円、250ポイント満点で、お客さんが300円で使える場合、2円×250P(枚)=500円が300円。つまり、お客さんに付与したポイントを全部回収したとしても、満点に対して200円(200円÷500円=40.0%)が実施主体に残る。
*これを事業運営の原資とし、その一部を使って、満点になる優良顧客さんを優遇・歓迎する。具体的には、現金で買えばポイント1倍だが、満点のポイント(スタンプ)で買うと、ポイント(スタンプ)2倍~5倍(満点分のみ)という企画を通年で行う。
*一方、「1ポイントから使える」というものは、お客さんは支払いの際、半端な部分にそれを充てることとなり、固定客化の目的からすれば、お客さん方にも店にも必ずしも有益とは言えない。

◆「個別管理しない固定客化」
ポイント制で情報を集めて顧客管理、という発想が平成の時代にあったが、多額の経費を掛かけた割には効果が現れていない。特に同業者も多い商店街等では、顧客情報の共有化は不可能だった。そんな中、十数年前に筆者が考案したのが「個別管理しない固定客化」という発想だ。「満点になる優良顧客さんを優遇・歓迎する」上記の手法で、個人情報に触れずに固定客化が果たせる。

◆「〇倍セール」の販促効果?
ポイント制の販促企画では「〇倍セール」は定番だが、実は日程を設定した「〇倍セール」は効果のある業種のほうがむしろ少ない。つまり、価格破壊の時代を生き抜いた、「ついで買い」や「まとめ買い」ができない業種や商品では「〇倍セール」の効果は無きに等しい場合も多い。
➡その解決策  「自家発行型商品券」との連携、 「満点カード(満点台紙)1枚・総額2倍」他。

◆「顧客満足と利益確保の両立」 
❶ 現金よりポイント(スタンプ)で買う(支払う)顧客さんを優遇・歓迎。 
❷ ポイント(スタンプ)による、社会(地域)課題解決。 
❸ ポイント(スタンプ)の業種別個店有効活用法の徹底。
【20220202】











 一般的に「顧客満足」は商品やサービスによって得られ、「利益確保」は企業の経営手腕によって達成できるものと考えられてきました。しかし、平成の時代に、商品等で顧客満足を得られない中小企業は自然淘汰され、一方で地域ポイント制(スタンプ・カード等)は、【価格に関しても、顧客満足と利益確保の両立】の手立てへと変化しました。

 日頃、店とお客さんは目に見えない綱引きをしています。店は少しでも高く買ってほしい、お客さんは、できるだけ安く買いたい。一般的に綱引きには「引き分け」はありません。しかし、何らかのポイント制があれば(正しく機能していれば)、「引き分け(両立)」もあり得るのです。

100円のお買物に付き2円(2%)のポイントの場合
1000円の商品を10%引きの価格で売ると「900円」
これを1000円の8%引きにしてポイント(2%)を付けると
「902円」
⇒1000円の8%引きは920円-(9ポイント×2円=18円)
=「902円」

 そして、推奨するのは満点方式。つまり、250~500ポイントで300~500円の消費者還元(お客さんが買物に使える)。「8%引きの価格+ポイント(2%)」の場合、「10%引き」と同じように思えますが、満点ポイントで買物をする顧客さんに、プレミアムを付けることによって、ポイントが2%以上の価値となります。

 つまり、満点になる優良顧客さんが「割り勘勝ち」となる仕組みです。それでは何となく不公平だとの声もあるでしょうが、それは違います。「店に利益をもたらすお客さんほど多くの恩返し」。これこそ、「公平」の大原則ではありませんか。「おまけで固定客化」という発想だった「ポイント制」は、規制緩和による価格破壊の洗礼を受け、「顧客満足と店に利益確保の両立」のためのツールに進化したのです。

 上記は消費税率が3%から5%に上がった平成9年4月、当時、中小企業事業団職員だった河上高廣さん(数年前まで中小機構九州本部長)の推薦で、日経流通新聞(現・日経MJ)に連載させていただきました。これを機に、私は福岡から全国に伺うことになったのです。

 その後、「ポイント制」の大きな特性は、「まとまった商業集積が無く、地域内に商店や事業所が点在している状態でも成り立つ共同事業」であることが確認されました。また本来、小売業・サービス業の販売促進策だったポイント制は、平成の時代に「製造業や公共事業専門の土木建設業を除くほとんどの業種」で有効な、「地域起こし事業」へと変身したのです。
【20220930】

店舗・会社情報

店舗(企業)名 地域商業研究所(金尾敏郎)
ふりがな ちいきしょうぎょうけんきゅうしょ
カテゴリー コンサル・士業・専門家
商店街
所在地 812-0008
福岡市博多区東光1-6-16 マインズ博多駅東 807号
電話番号 09087695304
代表者 金尾敏郎
設立(創業)年月日 1992-01
取り扱い商品・サービス 地域や企業のポイント制の再生が専門 ・各種商品券・キャッシュレス決済
紹介文 地域や企業のポイント制(スタンプ・シールやポイントカード)の再生が専門。ポイント等の業種別個店有効活用法・ポイント制・各種商品券・地域通貨・キャッシュレス決済等による地域循環型経済を目指す。
ホームページURL https://www.facebook.com/kanao10/info
メールアドレス kanaot10@gmail.com